中小企業診断士2次試験対策を進めるにあたって、設問解釈の重要性を無視することはできません。2次試験では、設問の意図を正確に理解し、それに応じた解答を作成する能力が問われます。特に設問解釈が甘いと、いくら知識を詰め込んでも得点が伸び悩んでしまいます。設問のタイプ、時制、制約条件、社長の想い、設問の難易度といった要素を把握し、的確な答案を作る力を養うことが重要です。
目次
設問解釈の手を抜いて起こる悲劇
設問解釈で力を抜いてしまうと、こんな悲劇が!
- 設問の意図を誤解し、不正確な解答を作成してしまう
- 時制や制約条件を無視し、現実的でない提案を行う
- 社長の想いを反映しない不適切な施策を提示する
設問解釈が不十分だと、社長の意向を無視した解答を作成してしまったり、過去の成功事例を将来の提案として使ってしまったり、悲惨な大事故を引き起こすリスクがあります。
設問解釈の重要性を理解する
中小企業診断士2次試験では、設問解釈が合格の鍵を握ります。設問を理解し、その意図に沿った適切な解答を導き出すためには、設問のタイプや時制、制約条件を把握することが必要です。
設問解釈の項目
設問解釈のポイントとして以下を挙げます。それぞれについて詳しく解説していきます。
- 設問のタイプ
- 時制
- 制約条件
- 社長の想い
- 設問の難易度設定と優先順位付け
設問のタイプを理解する
設問解釈において、まず重要なのは設問のタイプを正確に把握することです。設問は、主に3つのタイプに分類されます。これらの違いを理解し、それぞれに適した解答を導くことが合格への一歩です。
- ①与件文の情報を整理するもの
- ②施策の結果や効果、ねらいを示すもの
- ③助言を行うもの
①与件文の情報を整理するもの
このタイプの設問では、与件文に記載された情報を整理し、論理的にまとめる力が求められます。主に
強み、弱み、SWOTや3Cを解答するものがこれに当たります。この設問で抽出したSWOTや3Cは別の設問で解答に用いることが求められるので、最も優先順位が高い設問になります。
難易度:低
②施策の結果や効果、ねらいを示すもの
このタイプの設問は、企業の過去の施策の結果や、将来の効果を分析する力が求められます。与件文の内容と経営理論から、施策でどのような結果や効果が得られたのか、その施策にどのようなねらいがあったのか、考える力が求められます。
難易度:中
③助言を行うもの
助言を行う設問では、社長や事業戦略を反映した助言を行うことが求められます。社長の想いを理解し、それに沿った適切な助言を行う必要があります。経営理論の理解と想像力を発揮する必要があり、難易度は比較的高くなります。
難易度:高
時制の理解と適用
設問解釈において、時制の理解も重要です。過去、現在、将来という時制の違いを理解し、それに基づいた解答を行うことで、設問の意図を正確に反映した答案が作成できます。
①過去の時制
過去にどのような出来事があったのかなどを問われる設問です。既に起こった事象を与件文から読み取ればいいので、難易度は相対的に低くなります。
難易度:低
②現在の時制
主にSWOTや3Cなどを問われることが多いです。与件文から現在の状況を把握し、解答を作成する必要があります。
難易度:中
③将来の時制
助言問題のほとんどは、将来の施策による効果を予測する必要があります。理論としての施策の効果を把握した上で、想像性も求められるため、難易度は相対的に高くなります。
難易度:高
制約条件を考慮する重要性
解答の制約条件を把握しておかないと、解答を作成する範囲が無限に広がってしまい、どの方向で答えたらいいんだ!と混乱することになり、ただただ時間を浪費することになってしまいます。例として、令和5年事例Ⅱ設問3の制約条件を示します。
女子の軟式野球チームはメンバーの獲得に苦しんでいる。B社はメンバーの増員のために協力することになった。そのためにB社が取るべきプロモーションやイベントについて、100字以内で助言せよ。
この設問で読み取ることができる制約条件は以下の通りです。
制約条件を把握しておかないと、誰に対して、どんな施策を打てばいいのか方向性が決めきれないですよね!?
- 目的は女子軟式野球のメンバー獲得
- プロモーションについて助言
- イベントについて助言
社長の想いを掴む
助言する設問では、社長の想いや事業戦略を理解し、それに基づいた解答を作成することが求められます。令和5年事例Ⅱ設問4のように、社長の想いが設問文に載せられていることがよくありますので、これを見逃さないようにしたいですね!
B社社長は、長期的な売り上げを高めるために、ホームページ、SNS、スマートフォンアプリの開発などによるオンライン・コミュニケーションを活用し、関係性の強化を図ろうと考えている。誰にどのような対応を取るべきか、150字以内で助言せよ。
社長の想いは
- 長期的な売上を高めるために、顧客関係性を強化したい。
- オンライン・コミュニケーションを活用したい。
設問の難易度を見極める
設問の難易度を見極めることも重要です。設問の難易度を正確に把握し、それに応じて、解答を作成する順番を決めることで、効率的な解答作成が可能となります。難易度の設定は設問のタイプ、時制、制約条件の明瞭さの掛け合わせで行います。がくじんが実践した難易度の見極めと対応を以下の表に示します。
設問のタイプ | 難易度 |
---|---|
情報の整理 | 低 |
効果、ねらい | 中 |
助言 | 高 |
設問の時制 | 難易度 |
---|---|
過去 | 低 |
現在 | 中 |
将来 | 高 |
制約条件や社長の想い | 難易度 |
---|---|
明確 | 低 |
不明確 | 高 |
これらを掛け合わせて、設問の難易度を決めます。
例えば、助言タイプの設問で、将来について問われ、社長の想いが明確な場合であると、難易度は高×高×低となり、おおよそ難易度が高い問題なんだなと当たりを付けます。最終的に難易度は全設問を相対的に評価して設定します。
がくじんはれぞれの設問で難易度を設定した後、下表の様に対応していました。特に超難問だと感じる問題は他の受験者もまともな解答を出せることは少ないとおもいます。そんな時は、思い切って捨て問とし、必要以上に時間を掛けないような立ち回りも必要です。(この場合でも部分点狙いで、空欄は避けないといけませんが…)
難易度 | 解答の優先順位 | 対応 |
---|---|---|
低 | 高い | まず最優先に解答作成に着手する。取りこぼしのないように! |
中 | 中ぐらい | しっかり時間をかけて解答を作成する。 |
高 | 低い | 余りにも難易度が高いと感じた場合は、捨て問と割り切り、時間を使い過ぎない。 |
難易度に応じた優先順位で、時間配分を効率的に行い、試験での高得点を目指しましょう。
実践!設問解釈!
それでは、上記のポイントを基に、令和5年事例Ⅱを元に設問解釈を行ってみましょう。
設問1
B社の現状について、3C(Customer:顧客、Competitor:競合、Company:自社)分析の観点から150字以内で述べよ。
1.設問のタイプ | 情報整理 |
2. 時制 | 現状 |
3. 制約条件 | 3C分析 |
4. 社長の想い、戦略 | ー |
5. 設問の難易度設定と優先順位付け | 難易度:低 優先度:高 |
設問2
低学年から野球を始めた子どもは、成長やより良い用品への願望によって、ユニフォーム、バット、グラブ、スパイクといった野球用品を何度か買い替えることになるため、金銭的負担を減らしたいという保護者のニーズが存在する。B社は、こうしたニーズにどのような販売方法で対応すべきか、プライシングの新しい流れを考慮して、100字以内で助言せよ(ただし、割賦販売による取得は除く)
1.設問のタイプ | 助言 |
2. 時制 | 将来 |
3. 制約条件 | プライシングの新潮流を考慮した販売方法?割賦は除く |
4. 社長の想い、戦略 | 金銭負担を減らす(客単価低減) |
5. 設問の難易度設定と優先順位付け | 難易度:高 優先度:低 ※ |
※プライシングというキーワードに迷いが生じたため、難易度は高いと設定した。
設問3
女子の軟式野球チームはメンバーの獲得に苦しんでいる。B社はメンバーの増員のために協力することになった。そのためにB社が取るべきプロモーションやイベントについて、100字以内で助言せよ。
1.設問のタイプ | 助言 |
2. 時制 | 将来 |
3. 制約条件 | プロモーション、イベント |
4. 社長の想い、戦略 | 女子軟式野球チームのメンバー獲得 |
5. 設問の難易度設定と優先順位付け | 難易度:中 優先度:中 |
設問4
B社社長は、長期的な売り上げを高めるために、ホームページ、SNS、スマートフォンアプリの開発などによるオンライン・コミュニケーションを活用し、関係性の強化を図ろうと考えている。誰にどのような対応を取るべきか、150字以内で助言せよ。
1.設問のタイプ | 助言 |
2. 時制 | 将来 |
3. 制約条件 | オンライン・コミュニケーション (ホームページ、SNS、スマートフォンアプリ) |
4. 社長の想い、戦略 | 長期的な売り上げ向上⇒顧客関係性の強化施策 |
5. 設問の難易度設定と優先順位付け | 難易度:中 優先度:中 |
まとめ:設問解釈を徹底し、合格を目指す
設問解釈を徹底し、設問の意図を正確に読み取ることが、中小企業診断士2次試験において合格への道を切り開きます。以下にポイントをまとめておきます。
- 設問の意図を正確に把握し、それに応じた解答を作成する
- 設問解釈を徹底し、設問の難易度や制約条件を理解する
- 難易度に応じて、解答の優先順位を決め、時間を効率に使う
さいごに
個人により、好みや得手不得手があるので、一概にも上記の取り組み方が正しいとは言えません。本稿を参考にご自身にあった方法を見出していただければと思います。しかし、どんな方法でも、設問解釈の重要性は変わりません。設問の意図を正確に読み取り、それに基づいた具体的で効果的な解答を導く方法を準備することで、試験に臨みましょう!