本記事では資格概要や年収、メリットや取得方法について、筆者が経験を踏まえて、超ざっくり解説でお伝えします。
ぜひ興味のある方は最後までお読みいただけますと幸いです。
それでは、早速本題に入りましょう!
目次
中小企業診断士とは
中小企業診断士とは、中小企業の経営課題に対応する専門家で、ビジネスマンが取得したい資格No.1として挙げられることもあります。国内では唯一のコンサルタントの国家資格で、国内版MBAとも言われています。
資格の概要
本制度は、経済産業大臣が一定のレベル以上の能力を持ったものを、「中小企業者に適切な経営の診断および経営に関する助言できるもの」として国家に登録する制度です。従って幅広い経営に対しての知見が求められます。
他にも行政や金融機関とのパイプ役や行政による施策の適切な活用支援等幅広い活動が求められています。
資格取得のメリットは?
資格を取得することには数多くのメリットがあります。筆者が実際に体感したものを中心にご紹介します。
経営知識を得ることができる。
資格を取得する為には第1次試験、第2次試験(記述、口述)を突破する必要があります。詳しくは後述しますが、第1次試験は7つの科目がありこの科目を学習する中で幅広い経営知識を得ることができます。
また第2次試験では事例企業に対し、論述によって課題の提案や助言する能力、財務諸表を読み解く能力が求められます。これらを学習する中で経営診断、経営戦略の策定スキル、リーディングやライティングのスキルを身に付けることができます。
多様な人脈を得ることができる。
筆者が最も強く感じるメリットは、多様な人脈を得ることができることです。この資格を取得している方は多岐に及びます。弁護士、税理士、弁理士、公認会計士と言った方々や金融や大手メーカーに勤めるビジネスパーソン、IT系人材、中にはプロのアナウンサーの方までいらっしゃいます。どなたも難関試験をくぐり抜けて来た猛者ばかりで大いに刺激になります。特に横の繋がりが強い資格だと言われ、都道府県の協会や勉強会の活動が活発で、このような団体に加盟することで多様な方に巡りあうことができるでしょう。
社会的な信頼性があがる。
本資格は「中小企業支援法」第11条に基づき経済産業大臣が登録する法律上の国家資格です。国からのお墨付きがあるという訳で、それだけで社会的な信頼性が得られ、ご自身のブランドづくりに大いに役立つでしょう。
年収がアップする。
協会の「活動状況アンケート調査」の結果では、年間売上もしくは年収のボリュームゾーンは501~1500万円で、日本の給与所得の平均値461万円を大きく上回っており、年収をアップすることができると言えるでしょう。また、企業に勤める方は資格手当が用意されていたり、資格を活かした副業を行うことで年収アップを望めるでしょう。
AIに代替されない
昨今、生成AIなど多くのAI技術が生み出され、将来的に多くの仕事がAIに奪われると予想されています。そんな中でも2017年9月の日経新聞記事によると、野村総研とオックスフォード大との共同研究の結果、中小企業診断士業のAI代替可能性は0.2%と他の士業に対して著しく低くなっています。対象の選定条件が不明確で一概にこれが正しいとは言えませんが、社会的なコミュニケーション能力が求められ、AIに代替されにくい資格と言えます。
資格取得のデメリットは?
一見、良いことづくめですが、取得に当たりデメリットは無いのでしょうか。
資格取得には相応の時間が必要。
資格を取得するには難易度の高い試験に合格する必要があり、学習に時間がかかってしまいます。一般的に試験に合格するには1000時間の学習が必要とされます。また、国に登録するには15日間の実務従事もしくは実務補修が必要で、試験に合格してすぐ資格を名乗れる訳ではありません。
独占業務が無い。
中小企業診断士は税理士や公認会計士といった他の士業と違って独占的な業務がありません。故に資格の取得→即独立とはなかなかならず、一部で資格に意味が無いと言われるゆえんになっています。しかし逆を言えば、独占業務が無いことで業務が多岐に渡り、必然的に横の繋がりが強くなるため、大きなデメリットではないと感じています。
どこで活躍してる?
普段の生活を送る上ではなかなか目にすることが少ない中小企業診断士ですが、具体的にどこで活動、活躍しているのでしょうか。活躍する場として大きく分けて、行政や公的な団体からの委託を受けて活動する公的業務や、民間企業からの委託を受けて活動する民間業務があります。
公的業務
国や地方自治体の行政機関、中小企業基盤整備機構、都道府県等中小企業支援センター、商工会議所・商工会などの公的機関から委託されて行う業務が公的業務にあたり、窓口業務や専門家派遣などが該当します。
窓口業務
公的機関に設置された経営者や起業家向けの相談窓口の相談員として相談にあたる業務です。
専門家派遣
企業が抱える経営課題を解決するため、公的機関に登録した有資格者が企業に派遣されます。
民間業務
もちろん業務には公的機関以外からのものもあります。特に高い売上を達成している方は民間業務を中心に活動されているイメージがありますね。
経営コンサルティング
企業の現状を分析し、経営課題を明らかにして、解決策を提案することで、企業の経営に貢献します。コンサルティング内容は業績改善、経営戦略策定、財務への助言など、多岐に渡ります。
その他の活動
経営知識の発信
その他の活動として、企業経営の幅広い専門知識を用いて、セミナーや講演会を請け負ったり、ブログやX、Youtubeで情報発信したり、経営者や学生などに経営知識を提供している方も多くいらっしゃいますね。
ざっくり年収は?
一番気になる(かもしれない)年収はいったいどれくらいなのでしょうか。協会のリサーチ結果をもとに見てみましょう。
「中小企業診断士活動状況アンケート調査」結果 (令和3年5月中小企業診断協会調べ)
コンサルティング業務日数の合計が「100日以上」の方を対象として集計で最も多かったのが501~800万円」で、次いで「1,001~1,500万円」となっています。日本の平均年収は461万円(令和4年国税庁調べ)なので、積極的に活動すれば、豊かな暮らしができそうですね。1,001万円以上稼ぐ方も34%いらっしゃるので、能力次第で高収益も夢ではありませんね。筆者の実務補修の担当講師はレクサスに乗られていたので、「稼げるのでは?」と期待した覚えがあります(笑)
データで見る中小企業診断士中小企業診断協会HP
中小企業診断士になるためには
それでは資格取得するにはどうすればいいのでしょうか。簡単にその流れを解説します。
登録までの流れ
資格を取得するには、まず、中小企業診断協会が実施する第1次試験に合格しなければいけません。第1次試験に合格した後は、以下の2つの登録ルートがあります。時間に余裕なし&資金力に乏しいサラリーマンのがくじんは迷わずA.を選択しています。
A.中小企業診断協会が実施する第2次試験に合格後、実務補修を修了or診断実務への従事。
B.中小企業基盤整備機構または登録要請機関が実施する要請過程を修了。
試験制度
試験は、中小企業支援法第12条に基づく国家試験で、中小企業診断協会が大臣指定機関として第1次試験、第2次試験を行っています。第1次試験、第2次試験は次のような考えに基づき実施されています。(中小企業診断協会HPより)
第1次試験
中小企業診断士になるのに必要な学識を有しているかどうかを判定することを目的として、企業経営に関する7科目について、筆記試験(多肢選択式)を行います。
第2次試験
中小企業診断士となるのに必要な応用能力を有するかどうかを判定することを目的とし、診断及び助言に関する実務の事例並びに助言に関する能力について、筆記試験及び口述試験を行います。限られた時間の中で的確な助言をする必要があり、読み書きを含め高度で総合的なスキルが求められる試験になっています。
受験資格
受験資格はございません。年齢、性別、学歴等に関係なく、だれでも受験することができます。筆者は高専卒の準学士資格しかありませんでしたが、受験することができました。
試験日程
試験は例年、第1次試験が8月の第1週の土日、第2次試験では筆記試験が10月最終週の日曜日、同口述試験は翌年1月の最終週の日曜日に開催されます。
令和6年度の試験スケジュール
令和6年度の試験日程が令和6年3月26日に中小企業診断協会より発表されています。確認しておきましょう。
第1次試験のスケジュール
令和6年度の試験日程について中小企業診断協会HP
第2次試験のスケジュール
令和6年度の試験日程について中小企業診断協会HP
試験科目
試験の科目は多岐に渡ります。ここではざっくり各科目のについて説明します。
第1次試験の試験科目
A.経済学・経済政策
- マクロ経済学とミクロ経済学について出題されます。初学者であった筆者は初めて見る数式やグラフなどに戸惑った経験があります。
B.財務・会計
- 第1次試験において最重要科目と考えられる科目で、会計と財務の2つの分野から出題されます。計算問題が中心ですが、第1次試験では電卓の持ち込み不可なので、難易度が高い科目になります。筆者は唯一この科目のみ合格点に達しませんでした。
C.企業経営理論
- 企業の経営戦略や組織論、マーケティングに関する幅広い範囲から出題されます。経営コンサルティングにとって根幹となる知識が必要とされます。暗記系を得意とする筆者はこの科目と運営管理を得意としていました。
D.運営管理(オペレーション・マネジメント)
- 中小企業の現場を運営する上で必要な知見について問われる科目です。生産、販売それぞれの現場オペレーションに対する幅広い範囲から出題されます。
E.経営法務
- 知的財産権や会社法など、企業経営に関係する法律に関して出題されます。以前は難関科目とされ、救済措置が取られたりしましたが、ここ2年は易化する傾向があり、筆者はこの科目で85点と最高点を獲得しました。
F.経営情報システム
- 基本的なIT技術の知識について出題される科目です。運用面よりも技術面を問われることが多く、普段、IT技術に触れることの少ない方には取っ付きにくい内容かも知れません。ITパスポートや基本情報技術者の勉強経験のある筆者は比較的得意としていた科目でした。
G.中小企業経営・中小企業政策
- 他の科目と異なり中小企業経営に特化した経営や政策に関して出題されます。主に中小企業白書の内容から出題され、難易度は余り高くないとされます。しかし、筆者は舐めてかかり十分勉強時間を確保しなかったため、60点ぎりぎりという結果でした。
第2次試験(筆記)の試験科目
第2次試験は4科目です。科目ごとに事例企業が設定されており、企業の概要や状況が書かれた与件文を元に4、5問の設問に100字前後で回答する形式となっています。
A:中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 I
- 中小企業の組織や人事に関する経営戦略に関する事例企業が取り上げられます。第1次試験の経営戦略と関係性の強い事例になります。筆者はサラリーマンでありながら最も苦手とする事例で1回目の受験時に20点という超低得点を叩きだしました。
B:中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 II
- 中小企業のマーケティング・流通に関する事例企業が取り上げられます。第1次試験の経営戦略と関係性の強い事例になります。筆者は与件文に散りばめられた経営資源をパズルのようにはめ込んでマーケティング戦略を考えるのが好きで得点は安定していました。
C:中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 III
- 中小企業の生産・技術に関する事例企業が取り上げられます。第1次試験の運営管理と関係性の強い事例になります。腐っても製造系企業勤務である筆者は得意としていました。
D:中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 IV
- 財務・会計を中心として経営戦略を考える事例です。第2次試験でもっとも重要視される科目になり、ここ数年は難易度が上がっている印象です。時間のかかる計算問題を見究め、確実に取れる問題を選択するなど、戦略的に立ち向かうことが要求されます。
第2次試験(口述)の内容
第2次筆記試験に合格した方のみ受験できる試験です。15分間で主に第2次筆記試験内容についての質問に口頭で答える形で実施されます。合格率は99%超と人としてコミュニケーションが取れれば合格となるようです。と言いながらも全く回答できなければ稀に不合格になるようで、相応の対策が必要です。かなり準備をして挑んだ筆者も、変化球の様な質問に一瞬頭が真っ白になり、しどろもどろで回答した覚えがあります。
合格基準
難関試験だと言われます。その試験の合格基準をざっとお伝えいたします。
第1次試験合格基準
第1次試験の合格基準は、総点数の 60% 以上、且つ、 40% 未満の科目がないことを基準とし、試験委員会が相当と認めた得点比率となっています。
筆者はA60、B52、C78、D70、E84、F68、G62 で合計474点となり財務・会計を落としたものの、総得点の60%である420点を上回ったため、合格となりました。
第2次試験(筆記試験)合格基準
筆記試験における総点数の 60% 以上で、且つ、40% 未満の科目がないことを基準とし、口述試験における評定が 60% 以上であることが基準となっています。
なお、口述試験を受ける資格は、当該年度のみ有効であり、翌年度に持ち越しできません。
筆者はR4年度はⅠ20、Ⅱ64、Ⅲ67、Ⅳ67 となり、合計218点で総得点の60%、240点を下回り不合格でした。R5年度はⅠ54、Ⅱ67、Ⅲ75、Ⅳ63 で合計259点となり、リベンジを達成しました。
第1次試験の科目合格制度
第1次試験には科目合格制度が設けられています。科目合格制度とは第1次試験で不合格であっても、各科目で基準点である60点以上を得た人にその科目の科目合格を与える制度です。有効期間は科目合格をした翌年及び翌々年の試験までとされています。
実務補習(実習)
第1次試験、第2次試験に合格しても即登録とはなりません。登録申請するためには15日以上の実務補修の終了もしくは15日以上の実務従事が必要になります。実務補修は診断協会が実施しているものがあり、R6年度からは15日間コース、8日間コース※が用意されています。筆者は最初、15日間コースに申し込みましたが、ハードなスケジュールにビビって5日間コース※に変更しました。※R6年夏で5日間コースは撤廃されるようです。
中小企業診断士養成課程について
第1次試験に合格した方は第2次試験の代わりに中小企業大学校の養成課程や民間機関の登録養成課程を受講することで、登録申請が可能です。期間は6ケ月で費用は200万円以上となっています。金融機関に勤める方が派遣されるイメージがありますね。
試験の難易度
合格率から見る難易度
令和5年度における第1次試験の合格率は29.6%、第2次試験は18.9%となっています。第1次試験と第2次試験を両方合格となると合格率は約5.5%となり、難易度が非常に高い試験だということがわかります。特に、相対評価と言われる第2次試験では、第1次試験を突破した猛者たちのうち上位20%に入らなければならない狭き門となっています。
試験に合格するまでに必要な勉強時間・期間は?
試験に合格するために必要な勉強時間は第1次、第2次試験を合わせて1000時間程度と言われます。筆者の感覚的にこの1000時間はかなり順調に合格に到達した方だと思います。ちなみに筆者は2年間2000時間の勉強時間を要しました。もちろん、これよりも短期間で合格された方や10年に及ぶ多年度受験生の方もいらっしゃいます。
試験勉強の仕方
最後に試験合格に向けた勉強方法を紹介いたします。
独学でも合格できる。
独学でも合格できます。筆者の周りにも独学で合格した方が大勢いらっしゃいます。
予備校を利用する。
継続的に勉強が難しい方は予備校を利用してはいかがでしょうか。一言に予備校と言ってもたくさんあり、それぞれの予備校に特色があるので、自分に合った指導方針の予備校を見究める必要があります。
通信教育を利用する。
予備校への通学が難しい方は通信教育を考えてみてはいかがでしょうか。筆者は第1次試験対策として診断士ゼミナールの通信教育を受け1年に合格にこぎつけました。通勤時に講義を視聴できるのがありがたかったです。
受験生コミュニティを利用する。
最近ではココスタをはじめとする受験生コミュニティの活動が盛んで、受験生が主体となった勉強会が数多く開催されています。特に第2次試験は情報戦ですので、こういったコミュニティで情報収集することも合格に必要なスキルかも知れません。
さいごに
今回は中小企業診断士がどんな資格で、どうすれば取得できるのかについてざっくりと解説しました。
この記事を参考に資格取得に向けて、頑張っていただけばと思います。