中小企業診断士のがくじんです。私は診断士の実務補修を通じて多くの学びと経験を得てきました。本記事では、中小企業診断士二次試験に合格した皆さんが実務補修をスムーズに進められるよう、準備と対策について経験をもとに解説します。
実務補修とは
中小企業診断士の資格取得には、二次試験合格後に実務補修または実務従事を通じた経験が必要です。この補修は、指定された期間内に企業を訪問し、経営診断や提案を行うものです。

実務補修の概要
- 実施主体:中小企業診断協会
- 期間:5日間、8日間、15日間のコース
- 内容:企業のヒアリング、経営課題の分析、改善提案の報告書作成
- 費用:無料または一部費用負担
実務補修は、座学とは異なる実践的な学びの場です。中小企業診断士として活動するためのスキルを体得する大切なステップです。
勘違いしてはいけないのは、これは講習会では無いということ。実際に企業様に出向き、経営者さんの貴重な時間をいただくことになるので、真剣に取り組みましょう。
役割は何を選択すべき?
実務補修では、担当する役割を選ぶ場面があります。役割ごとの特徴を把握し、自分に合ったポジション、経験したいポジションを選びましょう。担当割は班の人数や対する企業によって異なります。事前に指導教官から、希望の調査がありますが、必ずしも希望通りとならないと覚悟しておきましょう。
以下は筆者が実務補修を受講した際に実際に設定された役割です。対する企業の業種や規模、人数や指導教官によって、変わりますのであくまで参考としてください。

主な役割
- 経営戦略:文字通り経営戦略を提案すると同時にチームの指揮を執る役割を担います。計画立案や進捗管理が求められます。肌感ですが、業務負荷は他の担当に比べて2倍以上です←おすすめ
- 財務・会計担当:財務分析を担当します。実際の決算書をじっくり分析することになり、リーダーに次いで重要なポストです。
- マーケティング担当:マーケティングを担当します。オンライン/オフライン双方について提案が求められます。
- 商品開発担当:商品開発に関する提案を行います。商品自体を提案するのではなく、商品開発を進め方や体制について提案します。
- 運営管理担当:主に店舗や工場のオペレーションについて提案を行います。DXを含むことが多いようです。
- 人事組織:組織の体制や人材育成、評価制度などを提案します。
ではおススメは?
- おススメは経営戦略一択です。実際、実務補修のような形で企業の支援に入ることはほぼありません。企業の経営戦略を掴むこと、関係者間の調整や進捗管理を行うスキルが診断士には必須であり、診断士活動の前に経験できることはとても有意義です。そのかわり。。。実務補修期間中の負荷は思っている以上に高く、本業に影響することも覚悟しておかないといけません(そういう筆者は体験しておりません)。
実務補修に向けた準備事項
事前準備はするかしないかは自由ですが、ただでさえタイトな実務補修のスケジュールをそつなくこなし、本業に影響を与えたく無いなら、以下のポイントを押さえておきましょう。

必要な準備
- 資料確認:
- 中小企業診断協会から送付される事前資料を熟読しましょう。事前に送付されてくる資料は主に以下のものがあります。企業や指導教官によって異なりますので、送られてきたものを残さず確認しておきましょう。
- 対象企業の決算報告書
- 会社概要や組織図
- 長短期の行動計画
- 対象企業の業界情報
- 経営者インタビューのチェックリスト
- 中小企業診断協会から送付される事前資料を熟読しましょう。事前に送付されてくる資料は主に以下のものがあります。企業や指導教官によって異なりますので、送られてきたものを残さず確認しておきましょう。
- ヒアリング項目の抽出:
- 実務補修初日、すぐに経営者へのヒヤリングが予定されています。実務補修期間に入ってからヒヤリングする項目を考えていては間に合いません。業種別のチェックポイントが送付されていると思いますので、それを参考に企業様に合わせてヒアリング項目を抽出しましょう。
- だいたい1人10~20分程度のヒヤリングになるので、重要事項を聞き逃さないよう、項目を決めましょう。
- 財務分析
- 事前に対象企業の決算報告書が配布されますので、財務・会計の担当でなくても、事前に財務分析を行っておきましょう。まだ、二次試験から間もないので方法は覚えているはず。財務分析を行うソフトウェアを使用する権利も配布されますので、利用するのも手です。
- 財務分析を行っておくと、対象企業の課題が良くわかりますので、ヒヤリングや提案に役立ちます。
- ITツールに慣れておく!
- 実務補修はチームメンバーとデータを共有しながら進めます。データ共有ツールはその時のシチュエーションで様々です。最低限以下のツールを一度は使っておきましょう。
- GoogleDrive:ファイルを共有する際に使用します。
- DropBox:同上
- GoogleSpreadSeet:データの同時編集作業などで使用します。
- MicrosoftWord:提案書の作成はWordで行われます。提案書は決められたスタイルでの提出が求められますので、スタイルを崩さないような操作スキルが求められます。また、最終的に全担当の提案書が1つにまとめられますので、文書を結合するスキルがあれば、チームの助けになるでしょう。筆者は結合が得意であったため、スムーズに提案書を作成することができました。
- 実務補修はチームメンバーとデータを共有しながら進めます。データ共有ツールはその時のシチュエーションで様々です。最低限以下のツールを一度は使っておきましょう。
- スケジュール調整:
- 実務補修はメンバーが集合する期間だけではありません。調査や提案書はいったん帰宅してからも進めないととてもじゃ無いけど間に合いません。そのため、実務補修期間中はできるだけ、時間を確保しておく必要があります。
- 必要物品の準備:
- 言わずもがな、ノートPC、筆記用具、電卓、名刺はマストです。場所を移動しながら作業することも多いため、軽いモバイルPCが望ましいでしょう。また、実際の企業様の重要なデータを取り扱うため、本業で使用しているPCは避けるべきでしょう。筆者も実務補修日程が決まった後、大慌てでモバイルPCを手配しました。
- 実際に企業様を訪問するため、服装のスーツはマストとなります。
- あと、あれば便利なものとして、モバイル用のサブモニターやUSBメモリが挙げられます。(ITの苦手が人がいる場合、USBメモリが役に立ちます)
実務補修っていったい何をするのか
実務補修では、実際の企業を訪問し、以下の流れで進めます。 受講する地域やコース、担当の指導員によって異なるため、あくまで参考としてください。
実務補修の流れ

初日(集合):指導員からの説明とチームメンバーの紹介、企業訪問、ヒヤリング
中盤(集合):課題分析と提案の検討
終盤(集合):提案書の作成と最終報告
初日:
挨拶もそこそこに、早速、対象企業様にヒヤリングへ向かいます。ヒヤリングは一人10~20分程度、概ね2時間程度行われます。貴重な機会なので、真摯に経営者様と向き合い、お話を聞きましょう。
中盤:
ヒヤリングで得た情報を元にメンバーで対象企業の課題を抽出します。その後、自宅へ戻り、それぞれの担当範囲での課題を分析するとともに、経営改善に向けての提言をまとめていきます。ポイントは前倒し前倒しで進めていくことです。なぜなら。。。(後述)
終盤:
再びメンバーで集まり、お互いに持ち寄った提案を確認していきます。 そしてここからが実務補修のクライマックスです!
意気揚々と作りこんだ提案書、どうだろ指導員の方にお見せすると、自分の力の無さを痛感します。私は最終報告の前日、10ページ分をすべて書き直すというなかなかにハードな経験をしました。寝ずに提案書を作り、開店と同時にコピー屋さんに飛び込んだ思い出があります。これは指導員の指導方針が大きく影響があると思います。
それぞれの分担の提案書が完成するとWordの結合作業が待っています。これが曲者。Wordに使い慣れていないと、決められた様式にピシっと揃えるのはなかなかに骨が折れます。特にMacを使っている方がいると。。。
最終報告は実際に企業様に出向き、経営者さんと面と向かって提案書を報告します。 経営者さんは我々が思っている以上に真剣に提案を聞いてくださいます。たくさんの資料を提供してくださった経営者さんに真摯に向き合い、気持ちのこもった提案をしましょう。
実務補修中にやるべきことと注意点
- 実務補修期間中は、以下のポイントを意識して行動すると今後の糧になること間違いなしです!
やるべきこと
- 積極的な発言:チーム内で意見交換を活発にしないと、学びにもつながらないし、いい提案になりません。間違っていてもかまわないので積極的に発言し、議論を活性化させましょう。
- タスク管理:役割分担を明確にし、期限を守りましょう。これから診断士として活動するのに期限を守ることは基本中の基本です。
- 指導員の助言を活用:経験豊富な先生から学びましょう。懇親会や休憩中の雑談などで、指導員の先生としっかりコミュニケーションをしましょう。ベテランから学ぶことはたくさんあります。指導員の方から仕事が広がるという話も聞いたことがあります。
注意点
- 時間厳守:訪問スケジュールや締切、集合時間を守るのは士業ではマスト中のマストです!
- 柔軟性:予期しない課題に対応する準備をしておきましょう。短時間での実務補修では何が起こるかわかりません。スケジュールは十分に確保しておきましょう。
実録!筆者の実務補修体験談

私の実務補修体験は、特に2回目での企業訪問が印象的でした。経営者ヒヤリングの30分前に経営者さんと会えないことになり、やむなく、経理の女性へのヒヤリングとなりました。それが経営者以上に会社のことを考えている”できる人”で逆に勉強になりました。 最終日前に指導員から、ありがたいご指導を受けて提案書を徹夜で一から書き直すという体験も自分の限界を知るのにもいい経験になりました。そんな教官から、「お前は診断士としてやっていける!」と言われたことが、今も大きな勇気になっています。
終わりに
中小企業診断士としての第一歩となる実務補修は、多くの学びと成長をもたらします。十分な準備を行い、自信を持って取り組みましょう。この記事が皆さんの役に立つことを願っています。